ごろ寝の魔法―ジンのはなし

森の小道を抜けた先に、ぽっかりと開けた場所があった。
太陽の光がやわらかく差し込み、苔の絨毯がふかふかに広がっている。
「よし、ここでひと休みだな。」
そう言ったのは、やっぱりジンだった。
「また休むの!?」
「ちょっと、まだ昼なのよ。これから森の奥に行かなきゃでしょ!」
フユカが腕を組んで睨みつける。
ジンはあくびを噛み殺しながら、苔の上にごろりと横になる。
「奥は逃げないだろ。焦って歩いても、疲れたら結局止まるんだし。」
「……それは、そうだけど。」
フユカの反論は、思ったより力なく途切れた。
カヤノも不安そうに口を開く。
「でも、立ち止まったら、あっという間に夜になっちゃうんじゃ……」
「立ち止まんなくても、夜は来るだろ。」
ジンは空を見上げたまま続ける。
「むしろ、俺がこうしてごろ寝してるから、みんなも勝手に休めるんだぜ。なぁ、ハルメ。」
無邪気な共犯者
「うん!」
呼ばれたハルメは、すでにジンの隣で転がっていた。
「ほら見て、雲がウサギみたい!ねぇねぇ、次は何に見える?」
「カメじゃない?いや、パンに見えてきた。」
ジンの適当な答えに、ハルメは大笑いする。
その笑い声につられて、カヤノの顔から少しずつ緊張が抜けていった。
「……ほんとだ。雲って、いろんな形になるんだね。」
リリルでさえ、苔の柔らかさに心を許したのか、腰を下ろしながら小さく微笑んだ。
「苔がここまで整っている場所、滅多にないわ。…たまには悪くないかもね。」
フユカはしばらく腕を組んでいたが、やがて観念したように隣に腰を下ろした。
怠けることの効能
苔の上に寝転ぶと、土の香りとサンダルウッドの落ち着いた香りが混じり合って、身体全体に広がっていく。
深く息を吸うたび、肩の力が抜け、心がやわらかくほどけていく。
ジンがぼそっとつぶやいた。
「怠けるってさ、何もしないことじゃなくて、心を充電することなんだよ。」
フユカがちらりと横目で見る。
「へぇ、たまにはいいこと言うじゃない。」
ジンは目を閉じたまま、にやりと笑う。
「たまに、だからいいんだろ。」
あなたへのメッセージ
私たちは「ちゃんとしなきゃ」「がんばらなきゃ」と思いがちです。
でも、ときどき立ち止まって休むことは、怠けでも弱さでもありません。
むしろ、それがあるから次の一歩を踏み出せる。
雲を見上げたり、ただ横になったりする時間にこそ、心は静かに整っていくのです。
もし最近、少し疲れていると感じたら、ジンのように「ごろ寝の魔法」にかかってみませんか?
森の中でひとときの休息を終えた5人。
それぞれの顔には、出発前よりも穏やかな表情が浮かんでいた。
次にスポットが当たるのは、完璧さを追い求める精霊——リリル。